ナンブトラノオ(南部虎の尾、学名:Bistorta hayachinensis )はタデ科イブキトラノオ属の多年草。
特徴
多年草で全体に無毛。地下の根茎は太い。根出葉は数個つき、葉柄があり、葉身は長さ3-8cm、幅1.5-3.5cmになる卵状楕円形で、先端は鈍形、基部は浅い心形から円形になり、葉柄に翼はない。葉質は厚く、表面は深緑色で光沢があり、裏面は緑白色を帯びる。茎は根出葉の間から直立し、高さ15-30cmになり、茎には2-3個の小さな葉が互生する。
花期は7-8月。茎先に総状花序を1個つけ、花穂は円柱形で長さ1-3cmになり、淡紅色の花を密につける。花に花弁はなく、萼が花冠状に深く5裂し、萼片は卵状楕円形で長さ3-4mmになる。雄蕊は8個あり、花糸は糸状で細く、葯は小さい。子房の先に花柱が3個つき、糸状になる。果実は痩果で、3稜をもつ長さ約3mmの楕円形になり、黒褐色で光沢がある。
しばしば「雄蕊は10個」とされるが、それは誤りである。
分布と生育環境
日本固有種。本州の岩手県早池峰山の特産種で、高山帯の蛇紋岩地の日当たりのよい礫地に生育する。
名前の由来
ナンブトラノオのナンブは産地である岩手県の南部地方から、種小名のhayachinensis は、標本採集地の岩手県の「早池峰山の」の意味。
保全状況評価
絶滅危惧IA類 (CR)(環境省レッドリスト)
(2012年環境省レッドリスト)
ギャラリー
脚注
参考文献
- 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎他編『日本の野生植物 草本II 離弁花類』、1982年、平凡社
- 豊国秀夫編『山溪カラー名鑑 日本の高山植物』、1988年、山と溪谷社
- 清水建美、木原浩『山溪ハンディ図鑑8 高山に咲く花』、2002年、山と溪谷社
- 牧野富太郎原著、大橋広好・邑田仁・岩槻邦男編『新牧野日本植物圖鑑』、2008年、北隆館
- 大橋広好・門田裕一・木原浩他編『改訂新版 日本の野生植物 4』、2017年、平凡社
- 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- 生物多様性情報システム, 環境省




