戦車不要論(せんしゃふようろん)は、戦車は対戦車ミサイルや無人機により簡単に撃破されるため不要であるという理論。
概要
対戦車ミサイルの活躍
第四次中東戦争の緒戦、エジプト軍がソビエト連邦製のAT-3対戦車ミサイルを歩兵・装甲車で運用し戦車万能論を唱えてきたイスラエル軍の戦車を多数撃破した。これを受け、イスラエルなどの国は対戦車ミサイル対策を進めた。
しかし、その後のトヨタ戦争においても、チャド政府軍のミラン対戦車ミサイルを活用し、リビア軍の戦車部隊ほぼ一個旅団を壊滅させた。
また、2022年ロシアのウクライナ侵攻においても、数字上の戦力では圧倒的劣勢のウクライナが予測に反して善戦。特にアメリカ合衆国から供与されたジャベリン携行対戦車ミサイルの活躍が注目された。
ドローンの登場
2020年に9月27日から11月9日にかけて発生したアゼルバイジャンとアルメニアのナゴルノ・カラバフ戦争では、アゼルバイジャン共和国軍のドローンがアルメニア共和国軍のT-72戦車を撃破したとする動画を公開した。
2022年ロシアのウクライナ侵攻においてウクライナ軍はトルコ製の無人機「バイラクタル TB2」を投入、ロシア連邦軍の戦車(T-72など)複数を撃破したとみられている。
理論
上記の事例などから、高価な戦車は対戦車ミサイルや無人機などの比較的安価な兵器により簡単に撃破されたり、航空機からの攻撃で一方的に撃破されるため、コストパフォーマンスに見合わないものであり、不要とする考え方である。また、地域によっては戦車対戦車の戦いが発生しづらいと考えられるため、戦車は不要とする主張もみられる。
影響
全般
対戦車ミサイルが発達し、随伴歩兵による携帯用対戦車兵器を持つ敵歩兵部隊の掃討がより重要視されるようになり、戦車部隊と機械化歩兵部隊がともに行動する戦術が生み出された。
日本
陸上自衛隊は旧式化した74式戦車を2024年までに退役させ、代替に戦車ではなく16式機動戦闘車を配備する予定である。最終的に北海道と九州にのみ90式戦車・10式戦車部隊を配置し、本州には戦車を配備しない予定である。
アメリカ
アメリカ海兵隊は戦車不要論をうけ、保有するM1A2エイブラムス戦車を2030年までに廃止すると発表した。
ヨーロッパ
批判と戦車不要論に背反する動き
しかしながら、戦車不要論に背反するかのように、各国で新型戦車開発が続いている。 また、自軍側が戦車を持っている場合、敵軍側は自軍側が持つ戦車よりも高性能な戦車を持ってくるため、自軍側の戦車の能力が高くなれば、敵軍側は更に強力な戦車を開発せざるを得なくなり、結果としてそれが抑止力となるとする見方がある。
アメリカ
ワシントンD.C.にて開催されたアメリカ陸軍協会主催の武器展示会「AUSA」に合わせ、ジェネラル・ダイナミクス・ランド・システムズ(GDLS)が「エイブラムスX」を発表。またアメリカ陸軍は事実上の軽戦車とされる機動防護火力車両「グリフィンII」、後に「M10ブッカー戦闘車」の導入を決定した。
ロシア
2021年以降、最新型戦車のT-14を整備・部隊配備していく予定。また、T-14に興味を示す国が複数あるともいう。
フィリピン
2022年にフィリピン陸軍で60年ぶりに機甲部隊が復活した。
脚注
出典
関連項目
- ミサイル万能論 - 戦闘機無用論
- イスラエル・タル




